とても興味深い本を知ったので紹介します!
「WORK DESIGN(ワークデザイン):行動経済学でジェンダー格差を克服する」( イリス・ボネット,大竹文雄(解説),池村千秋)です。
私達は、みな、無意識のバイアスが根付いている。
まずは、次のストーリーを、読んでみてください。
父親と息子が交通事故に遭った。
父親は死亡、息子は重傷を負い、救急車で病院に搬送された。
運び込まれた男の子を見た瞬間、外科医が思わず叫び声を上げた。
手術なんてできない、その子は私の息子だから.
どう思われましたか?
私は、どういうこと?と頭が疑問だらけになりました。
外科医の息子さんということは、息子さんには2人の父親がいたのかな?
亡くなった父親は、実の父親ではなく、外科医の父親が本当の父親だったとか?
さて、本の答えは・・・
外科医は、母親だった。
でした!
これは、外科医は男性であると、無意識にバイアスがかかっているために起こります。
自分は、男女の差別をしてはいない。
多くの人が、そう思っていると思います。
しかし、自分では気がつかないうちに、男性はこうあるべき、女性はこうあるべき、という想いが根付いているのです。
まずは、こうした無意識のバイアスをみな持っていると認識することが重要です。
研究からわかったこと
この本には、様々なジェンダーに関する研究結果が紹介されています。
例えば・・・
・男性だけのチーム、女性だけのチームより、男女混合のチームの方が集団としての知性が高い結果が得られた。
・男性は女性より、自信過剰になりやすい。
・労働市場では、子どもがいる女性は不利に扱われ、子どもがいる男性は有利な扱いを受ける。
・女性は選挙に立候補したがらない。理由は、女性はリスクを嫌い、自信が乏しく、競争心が弱い傾向があるから。女性は男性以上に、選挙を取り巻く環境が自分たちに対して敵対的で、偏見に満ちていると思ってもいる。
・活躍する女性の肖像画(ロールモデル)がない場合より、活躍する女性の肖像画がある場合の方が、女性のスピーチの自己評価と審査による評価が高くなった。
・息子がいるより、娘がいる男性のほうが、女性の権利について厳しい判断をしない傾向がある。
いかがでしょうか?
私は、そうだったの?と感じるものもあれば、今までなんとなく感じていたことが、データではっきり示されたように感じたものもありました。
女性は、育児と家事の負担が、とてつもなく大きい。
女性のリーダーが少なく、就職に不利になっている理由として、私が特に感じているのは、女性は育児と家事の負担が大きいということです。
出産や母乳をあげることは女性しかできないので、最初の育児の負担が大きくなるのはわかります。
しかし、子供がある程度大きくなれば、男性だって育児はできるはずです。
それなのに、仕事は男性がするもの、家庭は女性が守るものという意識のもと、高度経済成長期の仕組みができあがり、それが維持され続けています。
職場や政治の場は、長時間働ける人ほど評価が高くなっており、育児や介護で短時間勤務をしている人の評価は低くなっています。
そうすると、何も成果がでないのに会社に長くいる人や、短時間勤務で評価されないから力を発揮しない人がでてきたりします。
これは、会社にとってもったいないことです。
女性も活躍した方が、平等であるし、よい結果が出ることは、研究結果から示されています。
本来であれば、生産性を軸に評価すべきです。
それでも、男性優位の現状があるのは、制度を整えるのが大変で、変えるのが面倒だからではないかと感じます。
政治の場も、クオータ制を導入したりして、女性を増やすべきです。
クオータ制が不平等だという声もありますが、女性が家事・育児の負担があることが考慮されないことが不平等ともいえます。
キャリアを積みたいと思っていて、本当に能力のある女性が、不当に扱われてしまうことがもったいないことです。
デザインの有効性を忘れないための合い言葉「DESIGN」
筆者は、デザインの有効性を忘れないための合い言葉として「DESIGN」という略語を紹介しています。
D=データ(data)
E=実験(experiment)
SIGN=標識(signpost)
有効な行動デザインの設計は、データを集めることから始まるそうです。
例えば・・・
あなたの会社ではこの5年間、男女をそれぞれ何人採用し、何人昇進させ、どのような地位に就け、どのくらいの給料を支払っているのか?
あなたの学校では、男女がそれぞれ読み書きの能力を伸ばしているのか、変わりがないのか、それともその能力が低下しているのか?
ロビーや会議室に飾られている肖像のうち、男女はそれぞれ何人ずつか?
こうしたことを知っておく必要ある。
うーん、具体的でわかりやすいですね!
こうした具体的なデータを集めることが、まずはスタートなのだと理解できました。
データを収集した後は、実験です。
レストランの店頭に掲げる表示、面接の手順、オフィスの壁に飾る肖像など「標識」の有効性を実験します。
これによって、どのような方法が不平等を和らげるために有効なのかを確認します。
そして、この実験の結果をもとに、適切な「標識」をつくります。
最後に大切なこと。
それは、「DESIGN」の原則を採用する政府や企業、学校が増えていることを周囲に伝えることだということでした。
私のアクションプラン
この本を読んで、私が行ないたいと思ったアクションプランはこちらの3つです。
- 私を含めた、みな、無意識のバイアスがあると認識する。
- ロールモデルを広げ、標識をつくる。
- 「DESIGN」の原則を理解し、採用する政府や企業、学校が増えていることを周囲に伝える。
日本における女性活躍のレベルは、大変低いものです。
世界経済フォーラムが出している「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」の2017年の日本の順位は、144か国中114位。
すごい低さですよね・・・。
人手不足も深刻化されている今、女性が等しく活躍できる環境を整えることは急務だと思います。
すべての日本人に読んでほしいと思った1冊です。
是非、手に取ってみてくださいね!