なぜ働き方改革が必要なのか。最近、この問いがよく話題になっていますが、その答えに納得いかない人もいるかもしれません。例えば、過去に「24時間頑張れますか」というCMが放映されていたように、「そんなに仕事時間を削減して大丈夫なの?成果がでないのではないか」と考える世代もあるかと思います。
そんな疑問に答えをくれたのが、ワークライフ・バランスの小室淑恵さんと元広島県教育長の平川理恵さんのVoicy対談です!Voicyは音声配信をするツール。私は小室さんの著作「プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術」を読んでおり、提案された仕事術がすごく興味深いと思っていました。そんな小室さんの生のお話しは、すごく内容が濃い物でした。
平川さんは、リクルート出身で起業されたのち、民間で初の女性校長になられた教育者。広島県教育長も務められて、今ではVoicyで様々な発信をされています。そんなお二人の働き方改革のお話しがとてもよかったので、印象深いところを紹介します。働き方を変えたいと思っている方の参考になれば嬉しいです。
日本は寝ずに頑張ってきた国
まず、「なぜ働き方改革が必要か」についてのお話しが興味深かったです。日本は寝ずに頑張ってきた国。「24時間働けますか?」というCMがあったように、長時間労働が常態化していました。そういう人たちからすると、「働く時間を短くしてしまって大丈夫なの?」「売り上げが下がるのでは?」と危機感がある人がいるそうです。
この疑問は、正直なところ私も少しもっています。私はIT系の企業に勤め、15年前は深夜3時まで働いていたことがありました。そこまでしたからこそ、会社として精度の高いシステムが開発できているのではと思ってしまうところがあります。
小室さんは、ワークライフ・バランスという会社を立ち上げて、企業や学校、公官庁の働き方のコンサルティングをおこなっています。実際に様々な団体の働き方をコンサルしてきて、働き方を変えた企業などは結果として、売り上げが上がる、中小企業だといい人材が入ってくるという効果があるとはっきりおっしゃっていました。大手企業では、そういう働き方ならと役員を目指す女性が増えるそうです。
働き方を変えると売り上げがあがり、よい人材が増える!
人口ボーナス期と人口オーナス期
では、今までは長時間労働をおこなってきたのはなぜなのでしょうか。印象深いのは、人口ボーナス期と人口オーナス期があるという小室さんのお話です。
人口ボーナス期は、人口構造がボーナスをくれる美味しい時期。若者がたっぷりで、高齢者が少ない。どの国も1度だけくる時期。若者の比率が高いということは、安い労働力を武器にして世界中の仕事を大量におこなうことができます。
社会保障を必要とする高齢者がちょっとしかいないので、儲けたお金による利益を減らしてしまう人がいない。利益が非常に余っている。余った利益をばんばん道路や公共事業などのインフラに投資ができる。そのため、目に見えて国が経済成長できるのだそうです。
日本では60年代~90年代にあたり、高度成長期とばちっと合致します。団塊世代が不眠不休で、長時間労働で、理不尽な転勤も耐え抜いて、頑張って働いたからこの国は成長したんだ!このようなメンタリティをみんなで共有しているけれども、実際は人口比率のせいとのこと。これを聞くとがっかりする方もいるけれど、人口の構造に合わせた働き方があるんだよということだそうです。
なるほど。成長の原因は人口比率!
今は人口オーナス期。オーナスとは「重荷」「負担」を意味する言葉。みなさんもご承知のとおり、日本は今、超少子化でどんどんと人口が減っていく国になっています。そのため、労働力がもうないんですね。じゃあ、どうしたらいいか?対策は次の2点。
①労働力が少ないから女性も働こう。
②育児、介護が必要になるが24時間働けますかではできない。多様な働き方が必要。
最近よく女性活躍が話題になっているように、労働力が足りないことから、女性も働くことが必要になっています。しかし、育児や介護をしながら24時間働くことはできません。そのため、短い時間の中で効率化して、両立できるようにする。24時間働ける男性ばかりではなく、多様な働き方ができるようにならないといけないとおっしゃっていました。
たくさん残業してきた世代は俺はなんだったんだ!と自己否定に感じるけど、あなたの時代には感謝している。今は時代が変わっている。人口構造が変わっている。ビジネス環境が変わったら、ビジネス変えますよね。それと同じで、だから変えなければいけない。
過去の経緯から話さないと納得されないと小室さんはおっしゃっていましたが、確かにこの経緯を理解するとすごくわかりやすい!と思いました。
徹底してやるのは心理的安全性の確保
じゃあどうするか?徹底してやるのは「心理的安全性の確保」だと小室さんはおっしゃっていました。
ワークライフ・バランスでは、ふせん会議を推奨しています。ふせん会議とは、無記名でふせんに意見を書いて提出し、会議をおこなうというもの。例えば、ある建設会社でこのふせん会議をおこなったら、「意見が言いづらい」、そもそも「顔が怖い」という意見があったそうです笑。これは上司も悪気はないんですよね。よかれと思って声をかけているのだけれど、それが圧力になっている場合がある。コミュニケーションのどこが悪いのかをふせん会議を通して知ることができます。これらを少しずつ解消することで、働きやすい環境が整っていきます。
また、残業が多いと酩酊状態が多くなります。人間の脳は起きてからたった13時間しか集中力はないといわれているそうです。無理して夜集中するとミスにつながります。メンタルタフネスとは精神力の強さを表す言葉。生まれ持ったものではなく、努力して身につけることができるそうです。睡眠の精神は、6時間以上寝るとストレスの解消になるとのこと。6時間しか寝てないと体力の回復にしかなっていない。6時間以上寝ることで、ストレスの解消につながるのだそうです。そうだったんだー!
過労死は海外では「karoshi(カロウシ)」。日本語がそのまま英文として認識されています。過労死が発生しているのは、日本や韓国のみ。他の国では考えられない現象なのですね。過労死を止めるには、政府への働きかけが必要というお話しがすごく納得でした。
労働時間の上限の法律が必要
小室さんが強くおっしゃっていたのは「労働時間の上限の法律が必要」ということです。数年前、官邸で労働時間の上限について意見をしたら、次の日に注意を受けたそうです。2014年では勝てる戦いではなかったといいます。
その後、安倍総理が働き方改革に傾いたけれど、業界から反対があり終了。しかし、2018年ごろ、高橋まつりさんの過労死をメディアが取り上げて、働き方改革が広がったそうです。
平川さんは元広島県教育長をされていたこともあり、学校の働き方についても話が広がりました。学校の先生はどれだけ残業してもタダ。だから働かせ放題。これは1970年の法律。まだ改正されない。先生の成り手がいないという話があり、すごく納得!法律を変える必要があるのだなと感じました。
「先生がいなくなる」という本を小室さんは教育社会学者の内田良さんらと出版されています。ここで提言されているのが、部活は外部へということ。本来は先生の管轄ではありません。ちゃんとプロに頼もうという流れがあります。でもやってくれる人がいないのが現実。一般の人は仕事で忙しいなど、なかなか指導者が見つからないようです。
小室さんは、地域社会についてもおっしゃっていました。本当に素晴らしいビジネスパーソンが1日24時間仕事に捧げてしまったら、地域社会は空洞化する。人が根付かない。健康な肉体が日中は会社へ、でも適切な時間に家庭に戻ってくることができたら、地域社会に貢献できるとのことでした。確かに、定時に仕事を終えて変えることができれば、地域の学校の部活の指導者としてサポートすることもできそう!と思いました。
みんなで労働基本法に関心を持ち、声をあげていこう!
国会はその年に何を議題にするか決めているそうです。来年は年金国会。再来年は労働基本法=労基法。労基法がどう変わるかは、今年、来年の議論。小室さんが進めたいのは、時間外割増率についての議論とのことでした。他国は1.5倍。日本はたった1.25倍。数字だけ見るとちょっとの差に感じますが、これがすごく大きいのですね。
職員がギリギリの職場では「子持ち様はいいよね」という言葉がでてきたりします。子供がいる社員は仕事を休み、その分の仕事が出社している社員が担わされることを比喩する言葉です。雇う人を増やすより、残業させたほうが経営者は楽。そうではなくて、1人多めに雇っておこうというのが小室さんの提案です。個人同士がいがみあうのではなく、法改正が必要。そういう人を総裁選で選ぶべきとのことでした。
これらのお話を聞いてすごく実感したのが、「一人ひとりが関心を持って声を上げていこう」ということです。日本は労働者軽視。このままでは、その会社の経営としても沈んでしまう。「ブラックな企業を置いていってしまう」という表現を小室さんはされていました。ブラック企業もよくはならないということですね。
なお、小室さんが経営するワークライフ・バランス社では、「ワークライフバランス養成講座」がおこなわれているそうです。全国で企業のコンサルをおこなっていて、どういう働き方対策をおこなえばよいかを4日間。内容がみっちり!だそうです。たった4日間でワークバランスについて学べるなんていいな!と思いました。
最後に、小室さんがどうしてこれほどワークライフバランスについて熱く語るのかがわかるお話しがありました。小室さんのお子さんが、学校に行きたくないといって不登校になった時期があるそうです。その対応をおこなう中で、学校の先生が大変なのだときづいたとのお話しが印象深いです。
小室さんと平川さんのVoicy対談、本当にすごくよかったです!多くの人が知るべき内容だなと思いました。是非、今後の国会で話し合いがおこなわれる労働基本法にみんなで注目していきましょう!一人一人が関心を寄せることで、日本ももっと働きやすい社会になり、それが生きやすい人生につながるのだと思います。
Voicy対談はこちら↓
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