貧乏が、どれだけ人の心を病ませてしまうのか。それがよくわかる本を読みました。
西原理恵子さんの「この世でいちばん大事な「カネ」の話」です。
なんといっても、筆者の西原さんの人生が壮絶すぎる・・・!通常、そんなことありえないでしょう?と思うような体験をされているのです。その体験をもとに、働くことの大切さ、お金の大切さについて語ってくださっているので、本当に心に染みます。
一体どのような体験をしてこられたのか・・・?是非、一緒にお金や働くことについて考えていきましょう。
西原さんの壮絶すぎる人生
筆者の西原さんは、高知県生まれ。ご両親が離婚されて、お母さんがご実家に戻り、お人ちゃんも一緒に6歳まで暮らしたそうです。実のお父さんはアルコール依存症で、お酒を飲むと手がつけられないほど暴れたため、お母さんは子どもを守るために離婚されたそうです。
その後、お母さんが新しいお父さんと再婚され、別の町へ引っ越します。このお父さんが、バクチをする人だったのです。ほとんど家に帰ってこないし、お母さんの貯金にまで手を出すようになり、お母さんも常に怒ってばっかりの人になってしまったそうです。
なんてこと・・・
そして、西原さんは高校3年生の時に、友人とお酒を飲んでいたという理由で高校を退学になります。しかし、お母さんが「世間体が悪い、みっともない」から大検をとって大学へ行かせたらどうかという話になりました。
青天の霹靂!西原さんには、美大に行きたい、「絵を書いて、お話しを作る人になりたい」という夢があったのです。そこで1年かけて大検を取り、東京の美大を受験しようとしたときに事件が起こります。
お父さんが、首をつって死んだのです。
それも、受験するはずだったその日に。
ええええーーーーーーー!?
西原さんは、受験できるわけもなく、高知の家に帰ります。そこには、喪服を着たお母さんがいました。顔は殴られて、ぼこぼこに腫れて、頭も髪の毛も血だらけでした。お金に困ったお父さんが、お金をよこすようにいい、お母さんが頑として譲らなかったために、バンバン、バンバン殴ったそうです。そして、自ら命を絶ってしまったということでした。
受験するはずだったその日に、お父さんが亡くなる。こんなタイミングって、あるだろうか。本当に、お辛かっただろうなと思います。
そのまま行ったら破滅するに決まっている道を、人は突き進んでしまうことがある。
西原さんの言葉です。すごくよくわかります。端から見ると、どうしてそんなことをするの?と思うような行動を、人は取ってしまうことがあります。思い込みのような、自分を追い込んでしまう行動。そういうこともあり得るんだと意識しておくことで、自分自身が深みにはまっているときに、客観的に見ることができるようになるかもしれないと思いました。
貧乏は病気である
本の中には、貧乏な環境で暮らしている子どもがたくさんでてきます。それは、親自身が貧乏な環境だからであり、子どもにはどうすることもできません。非行に走る子供たちもその町では多かったそうです。
「貧しさ」は連鎖する。それと一緒に埋められない「寂しさ」も連鎖していく。
そう西原さんはいいます。貧乏という負のループを断ち切ることができず、次の世代の子供たちも背負っていくことになるのです。
貧乏を抜け出せないのは、個人の努力が足りないからでは?そう思う人もいるのではないでしょうか。しかし、西原さんは「貧乏は病気だ」と言い切ります。どうあがいても治らない、心の病気だ、と。何か1つの原因でそうなったわけではない。何年も何年もかけてそうなっていて、いつからそうなったのか、もはやわからないといいます。
私自身は、貧乏になってしまったのには何か理由があるのだと考えていました。誰しも望んでそのような状況になるわけではありません。けれど、病気だとまで考えたことがなかったので、そんなにも深刻なのかと感じました。
原因は1つではないから、解決もそう簡単ではないということがわかります。けれど、貧困の状況にある子どもに罪はありません。このような状況をなんとか改善できないものかと思います。まずは、実際に貧乏な状況にある家庭があり、そこでどうあがいても抜け出せない子どももいるという現実があると認識することが大事だと思いました。
マイナスを味方につけなさい
子供時代の辛かった思い出を踏まえて、西原さんはいいます。
マイナスを味方につけなさい。今いるところがどうしても嫌だったら、ここからいつか絶対に抜け出すんだって心に決めるの。そうして抜け出すことができたなら、あの辛い場所にだけど絶対にならないって、そう決めなさい。そうしたら、どんな大変な時だって、きっと乗り越えることができるよ。だって、私もそうだったから。
言葉に重みがある・・・
子供時代に辛かったことを乗り越えて、それで終わりかと思ったらそうではありません。このあと、西原さんはバクチにはまっていくのです。それは、漫画のお仕事の取材だったのですが、そこから本格的にはまってしまい、費やしたお金がなんと5000万・・・!
なぜ・・・?
義理のお父さんがはまってしまったバクチ。それと同じように、なぜか西原さんもバクチにはまってしまい、大きなお金を失ってしまいます。大変な思いをしているのだから、同じようにはなるまいと思っていても、人間はついはまってしまう世界がある。そう痛感しました。
次の家族への負のループを断ち切るには?
西原さんは、今ではバクチの世界から抜け出すことができています。これは、戦場カメラマンだった夫、鴨ちゃんに出会ったことが大きいといいます。しかし、鴨ちゃんは、アルコール依存症になり、暴力をふるうような生活になってしまいます。
またまたどうして・・・
実は、鴨ちゃんも幼少期、父から暴力をふるわれていたそうです。これは、もう、負のループとしかいいようがない!自分が幼い頃にされた悲しい記憶は、次の家庭につながっていってしまっているのです。
西原さんは鴨ちゃんとの間に2児をもうけていましたが、離婚。しかし、鴨ちゃんが病に伏し、それを看病するために同居し、サポートしていたそうです。その後、鴨ちゃんは亡くなったそうですが、西原さんは今は家族の笑顔がある場所、幸せで安心な我が家にいることができたと結んでいます。
ここから感じるのは、子どもが辛い思いをすると、それが次の世代にも引き継がれてしまう可能性があるということ。そして、それを乗り越えることもできるけれど、その子ども自身がとても大変な思いをするということです。そうした状況にある子どもを、少しでも少なくしたいと思いました。
大切な誰かを安心な場所にいさせたいなら、働いてお金を稼ごう!
人の気持ちと人の金だけはあてにするな!
西原さんの言葉です。いざ旦那が失業、いざ離婚となったとき、あなたはどうやって生きていくの?そう問いかけます。
夫が失業なんてすることないし、離婚になんてなることはない。そう考えて夫婦になる人は多いと思います。私もその1人です。
でも、人生何があるかわからない。やっぱり働いてお金がもらえる職があることはとても重要なことだと思いました。もちろん、家庭に入って、家族の身の回りの環境を整えることも、大切なことです。しかし、この本を読むと、お金がどれだけ人生にとって大切かがわかり、そのお金を自分の力で稼いでいくことはすごく重要なことなのだと感じます。
いざと言う時、大切な誰かを安心な場所に居させてあげたい。そう思うなら働きなさい。働いて、お金を稼ぎなさい。そうして強くなりなさい。それが大人になるって言うことなんだと思う。
働くということは、時に大変なことです。辛い思いをすることもあります。それでも、大切な人を安心な場所にいさせてあげるためには、しっかり働いてお金を得る必要がある。それを痛感するお話しでした。
この本は、貧乏で辛い境遇にある子どもに向かって書かれているように感じます。だって、まるで話しかけるような文章だから。この本は文庫版でも出ていますが、ハードカバーの本にはふりがなもついていて、子どもにも読みやすくなっています。だから、今、辛い状況にある子どもがいたら、その子に届けたいと思いました。
そんな辛い状況にある子どもがいないことが一番です。でも、もしいたとしたら、どうか届きますように。少しでも貧困で困っている家庭を救えるような行動をしていきたいですね。
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