チョコベリーの暮らしをちょっと豊かにするブログ

3児育児中のワーママです。ライフハック、子育てなど暮らしを豊かにするヒントや気づきを綴っています。

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「エンド・オブ・ライフ」を読みました。在宅医療の理解が深まり、すべての人には「持ち時間」があると学んだ話

「エンド・オブ・ライフ」を読みました。2020年本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞した本です。自分軸手帳部のイベントで知り、手に取ってみたのですが、本当に学びが多かった!!読んで良かった1冊です。

 

ノンフィクションの闘病記というとちょっと怖く感じて、手に取ることをためらってしまうかもしれません。でも、著者である佐々さんの描き方は描写が丁寧で、すごくわかりやすい。誰しもが迎える死を、様々な人の体験をまじえながら綴っています。

 

大きな病や介護は、これからの私たち自身やその周りの人におそらくやってくる事柄です。しかし、それらに向き合っている方のお話しを伺うことはなかなかできません。本を通じて理解できることがとっても貴重だと思いました。

 

どんなことが書かれているのか?本から得られる学びとは何だったのか?私が心に残ったことを交えて紹介しますね。

  

 

すべての人には「持ち時間」というものがある

 

訪問看護士である森山文則(ふみのり)さん(48)が身体の異変に気づいたのは、2018年8月でした。京都の訪問医療をおこなっている渡辺西賀茂診療所に勤めていました。咳が1ヶ月続いていたため、検査をすると、すい臓がんを原発とする肺がんの疑い。ステージⅣ。こうなると手術も放射線も功を奏しません。5年生存率が1.5%。

 

著者である佐々さんは、森山さんと共著を出すというお話しがあったことから、森山さんが出かける場所へ同行し、話を聞いて過ごします。その中で、印象的なお話しがたくさんありました。1番印象的だったのは、「その人には「持ち時間」というのがある」ということです。

 

もともとの持ち時間。長くも、短くもない。定められたその人の寿命なんです。僕らには延ばすことも短くすることもできない。抗がん剤を入れようが、免疫療法や自然療法をしようが、移植しようが、あきらめようが、その人には「持ち時間」というのがあるんです。人工的に何かできることと思うことが多くなって、実は医療行為と寿命との因果関係はほとんどないかもしれないのに、勝手に「もし、あのとき」と考えて後悔する。

「ああすればよかった」「こうすればよかった」と思いがちですが、そうじゃないところで、こうなったことの意味づけができたらいいですね。

 

森山さんは、どんな医療を受けたとしても、結局は私たちの寿命は定められていて、長くも短くもできないというのです。このこととつながるお話しがあります。筆者である佐々さんのお母様のお話です。

 

筆者は、難病の母がいました。在宅医療について興味をもったのも、この母がいたからであり、他の家の人はどのように暮らしているのかが知りたかったのだそうです。

 

筆者の母は、健康マニアでした。食べるものに気を配り、運動をし、早寝早起きを心がける。そんな母が1万人に1人という原因不明の難病になってしまったのです。筆者はいいます。「人生は不公平だ。私の母のように健康に気を配る人が病気になり、喫煙、深酒をする人が長生きすることもあるのだ。」

 

母が病気になってから、筆者は病気をくじ引きのようなものだと考えるようになりました。

 

母が病気になった原因は?ただの偶然だ。意味などない。それになんとか意味をつけようとするのが人間だ。人間は意味のない不運に耐えられないのだ。
私たちの人生はいつだって偶然に左右される。私たちは、その偶然を都合のいいように解釈し、おのおのが好きな意味で満たすのだ。

 

私たちは何か起きる度に、「なぜこうなったのか」を考えます。そして、これでよかったと思う理由を探します。本当にそれでよかったと思う理由に辿り着けることができた人が、幸せになれる。そういうことなのだと私は思いました。

 

私も、できる限り元気で過ごせるように、できることをしています。睡眠時間を多く取ったり、定期的に運動したり、栄養価の高い食事をとるようにしています。それでも、思いがけないことが起きる可能性はある。それが自分の「持ち時間」。自分の持ち時間をよりよい時間とし、周囲に幸せを与えられるような時間にしたいと思いました。

 

重要なのは、よい先生に出会えること。最期を迎えるのは病院でも在宅でもいい

 

本の中では、様々な医師も登場します。どの先生の言葉にも、心に残るものがあったのですが、ここでは女性の在宅診療医師、早川さんの言葉を紹介したいと思います。

 

早川さんは、よい医師と出会う出会わないも縁のものだとおっしゃいます。「主治医がどれだけ人間的であるかが、患者の運命を変えてしまう。患者さんが過ごす場所はどこでもいい。心地よく居られれば。それが1番良い。病院、ホスピス、自宅。どこだっていい。でも主治医は大切。」といいます。

 

先生や介護する人が重要だということは、筆者の母が熱を出し、入院したエピソードからも感じました。筆者の母は病により、食べることもままならなくなり、言葉を完全に失い、全身の自由が効かなくなってしまいました。そんな母を、父が献身的に介護します。

 

父の介護は完璧でした。日に3度の検温、ノートに記録。顔を蒸しタオルで拭い。化粧水を補う。母の肌は結構が良く、口腔ケアは朝昼晩とそれぞれ10分ほどかけて念入りに。寝たきりで意思表示ができない母に浣腸をし、便を出す。すばやくおむつを当てる。父の介護の描き方が本当にリアル。こんなに大変なのかと思うと同時に、これだけ愛情をもってできるものなのかと思います。

 

そんな献身的な介護を受けていた母が、熱を出して入院します。その病院でのケアはひどいものでした。まず、看護師さんに余裕がなく、腹を立ててばかり。母の歯を折ったり、アザを作ったりしたのです。

 

信じられない・・・

 

父があれほど丹念に介護していたのに、母はだんだんみすぼらしくなってしまいました。その後、母の熱は下がり、父と一緒に帰宅します。

 

このエピソードから、病院だからといってよいケアが受けられるわけではないということを痛感しました。自宅の方が決まり事がなく、融通がきくため、丁寧な介護を受けられることもあるということがわかりました。ただ、それもよい主治医に出会い、献身的な介護をおこなうことができる方がいる場合、なのですが。

 

いつでも思い返したい言葉は「楽しく、楽しくね」

 

本では、様々な在宅療養者のお話しがあります。こちらも、どのお話しも気づきが多く、心に残ることがたくさんありました。その中でご紹介したのは、篠﨑さんの「楽しく、楽しくね」という言葉です。

 

篠﨑さんは、余命がわずかということで、在宅で過ごされていました。篠﨑さんの妻が寄り添って、成人されたお子さんと一緒に過ごし、息を引き取られました。森山さんが亡くなった後、筆者は森山さんから過去にケアした方のご自宅を再度訪問してほしいと話を聞いていたため、篠﨑さんのご自宅を再訪しました。

 

篠﨑さんの妻は、何かある度に篠﨑さんだったらどういうかを考えているそうです。篠﨑さんがいっていた言葉は、「楽しく、楽しくね」。そして「1回しかない人生だから存分に楽しめよ。自分で決めた人生だったらそれが正解なんだから頑張れ。」きっとこういうと思って過ごしているとのことでした。

 

すごくいい言葉・・・!

 

人生を生きていると、いろんなことがあるものです。私の場合、本当に些細なことですが、子どもに対してイラッとしてしまうことがあります。思い通りに進まなくて、落ち込むこともあります。でも、今、健康に生きることができ、痛みがなく、笑ったり動けることは本当にありがたいことだと思うようになりました。

 

子どもに対しても、人間ですからイラッとすることはあるけれど、それをその怒りのままにぶつけてしまうのはもったいない。「楽しく、楽しくね」という言葉を思い出すと、自分が辛い状況にあっても、ちょっと見方を変えることで楽しみ、笑顔を見せることができると思うようになりました。

 

ゆったりと過ごして、よく寝よう!命の閉じ方のレッスンもその意味がよくわかる

 

「エンド・オブ・ライフ」は、筆者の佐々さんの描き方が本当に素晴らしかったです。京都の鴨川が「ヌメヌメと光っている」や、父の介護の様子について「父は黙って塩大福を口に運び、その粉が口の周りについた」など。その情景をよく表しているなと感じます。

 

森山さんの妻の言葉も印象的でした。「死んでいく人は、自分だけでなくみんなにとって1番いい日を選びます。それだけは信じているんですよ。」森山さんの妻も、医療関係のお仕事をしていました。その経験から語られるお話は、なんだか、大丈夫だよといってもらっているような気がしました。

 

森山さんの最期は、ご自身が看護師としてケアした患者さんの最期と同じ方法でした。森山さんが妻に対して、そうして送ってほしいと話していたそうです。これが本当に感動的。素晴らしい送り方だなと感じました。読みながら涙することも多く、森山さんからたくさんのものを受け取らせていただいたと感じました。

 

私たちは、日々、仕事をしたり、家事をしたり、育児をしたりして、忙しく過ごしています。ストレスを抱えることも多いです。でも、それによって身体を壊してしまうのは、とても残念なことです。何が病を引き起こすのかはわかりませんが、十分に睡眠をとり、リラックスすることは、少しでも予防につながると感じました。

 

これから多くの方が目の当たりにするであろう在宅医療とは、どういうものなのかがよくわかる本です。そして、多くの方々の生き様からたくさんの気づきを得られます。是非、手に取ってみてくださいね。

 

 

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